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社民党宣言を考察する-3

 今日は、社民党宣言の政策の基本課題について見ていきます。これは、あくまで個人的な見解なので宣言から検討していきます。
①社会的な規制による公正な市場経済
 生産・交換・分配の手段として市場の機能を認めつつ、それを万能として、すべてを競争の結果に委ねて、資産や所得の格差を放置する立場には立ちません。生活条件の向上と自然環境との共生を経済活動の主眼におき、公正な交換や取引き、分配が行なわれるよう市場の民主化や監視、規制に取り組みます。また、福祉や医療、教育など人々が共同で社会生活を営む分野で公共サービスの役割を重視し、その機能を充実させます。
②生きがい、働きがいの持てる労働環境
 労働は人々が生活を営み、自己実現していくために不可欠の要素であると同時に、社会の富の源泉です。人間をモノとして扱うような労働分野の規制緩和を許さず、同一価値労働・同一賃金といった均等待遇の保障の下で、多様な働き方を尊重し、働くことを望むすべての人々が完全雇用されることを社会の大きな目標とします。性差や年齢、国籍、障害の有無による雇用差別、コスト削減と目先の利益だけを追求したリストラは否定し、労働条件の向上を実現します。
③公平で持続的な税財政
 財政は人々が共同で公平に負担し、社会全体の利益のために事業を営む領域です。特定の企業・階層の利益や巨大公共事業に偏重した財政構造から雇用や福祉、教育など生活重視型へと転換し、地方への財源移譲や健全な財政構造の構築を進めます。税制には、富の偏在を防ぎ、負担能力のある人から社会の支えが必要な人へと所得を再分配させていく機能こそ必要です。逆進性の強い消費税を基幹税に位置づけて安易に税率を引き上げることは、低所得者層に一層の負担を強いるだけです。所得税・住民税の最高税率の引き上げや累進性の強化、企業に応分の社会的責任を求めた法人税の見直しに取り組みます。
④社会の連帯を柱とした社会保障
 福祉と社会保障制度の充実は、誰もが安心して人生をおくるために欠かすことのできない条件です。憲法25条の生存権を保障するため、行政の責任と社会の連帯を重視します。税と応能負担を原則とした保険料拠出によって、安心と公助の新しい年金制度、患者の立場に立った公的医療、誰もが安心して利用できる介護制度を実現するため、社会保障制度全体の抜本改革を図ります。また、子育て支援を拡充するとともに、障害者への差別の禁止と就労支援・所得保障の充実など福祉を拡充します。福祉への投資拡大で、老後や健康、子育てへの安心を確立するとともに、雇用創出や新規産業の育成など経済的な波及効果を実現します。
⑤豊かで多様な自治の展開
 住民の参加と自己決定権を保障する住民主権こそ、地域の個性豊かな自治を創造する前提です。住民自治を発展させる自治体改革に取り組み、自治体を国の「末端機関」、地域の「管理機関」ではなく、民主主義の拠点にします。基礎自治体を最優先し、国は広域自治体でも担えない事業を扱うといった補完性の原理に沿って、自治体へ大胆に権限と税源を移譲し、地方の主権を高めます。また、誰もが、いつ、どこででも安心、安全、快適に移動できる交通権を人権の一つとして確立し、公共交通の復権・拡充を図ります。
⑥世界の人々と共生する平和な日本
 国連憲章の精神、憲法の前文と9条を指針にした平和外交と非軍事・文民・民生を基本とする積極的な国際貢献で、世界の人々とともに生きる日本を目指します。核兵器の廃絶、対話による紛争予防を具体化するため、北東アジア地域の非核化と多国間の総合的な安全保障機構の創設に積極的に取り組み、「緊張のアジア」を「平和と協力のアジア」に転換します。現状、明らかに違憲状態にある自衛隊は縮小を図り、国境警備・災害救助・国際協力などの任務別組織に改編・解消して非武装の日本を目指します。また日米安全保障条約は、最終的に平和友好条約へと転換させ、在日米軍基地の整理・縮小・撤去を進めます。
⑦公正な国際経済と平和を基礎にしたアジア経済圏
 情報技術の急速な発展などが、国境を越えた経済の相互依存関係を拡大させる一方で、巨大な多国籍企業や金融資本が独占的に利益を獲得し、南北間の格差を拡大させています。また、企業が低廉な労働力の存在する発展途上国へと生産工程を移管することにより、国内産業の空洞化も進んでいます。成長と発展の恩恵が先進国や特定の企業にだけ還流することのないよう、通貨・貿易・信用取引きの公正なルール、国際的な自然環境の保護基準、国境を越えた労働者の権利の保障、多国籍企業の活動に対する国際的な規制を実現します。これらの観点を踏まえ、東アジア共同体構想を含め、平和と共生を基調にしたアジア経済圏の創設を進めます。
⑧両性平等社会の実現
 性によって生き方の選択肢が狭められるようなことがあってはなりません。職業、社会、そして家族生活において男女は常に平等であるべきです。ジェンダー(社会的・文化的性差)に対する偏見や制度的障壁から自由になるよう、これまでの制度や秩序を見直します。女性が個人として尊重され、積極的に社会参画を果たすことができるように、女性に対するあらゆる差別を禁止するなどの環境整備に努め、クオータ制度の導入・定着を図ります。また、男女がともに子育てや介護など家族的責任を果たすことができる法整備と長時間労働サービス残業の規制など、働き方の改善に取り組みます。
⑨豊かな自然環境を次世代に
 大量生産・大量消費・大量廃棄といった経済構造を自然環境と共生する循環型社会に転換し、水資源保護や森林整備を推進します。水資源の循環系への負荷を最小限にとどめ、保全と再生を図ります。地球温暖化防止対策を促進し、次世代に豊かな自然環境を手渡すため、産業界に温室効果ガスの削減を義務づけるなどの措置を実現します。また、あらゆる核を否定する立場から、脱原発を積極的に推進し、エネルギー利用の抑制を図りながら自然エネルギーの開発・定着に取り組みます。
⑩食と生命の安全を担う農林水産業
 農林水産業は、食料生産や生産手段・生活手段の供給源としてだけではなく、社会の経済活動の基本に位置し、地域の自然や文化を育んできました。国土の保全や雇用を生み出す力を秘めている農林水産業は、地域の宝物としなければなりません。安定した食料自給率を達成して食の安全を守り、農林水産業の担い手確保・多面的な機能の対価として直接所得補償制度を創設するなど第1次産業を維持、発展させます。また森林の公益的な機能を守る観点から、持続的な森林・山村対策を充実させ、国産材の利用を拡大します。国内漁業・水産業の存続に向け、浅海の生態系を守って資源の再生を進めるとともに、国際的な資源乱獲に歯止めをかけるルールをつくります。
⑪一人ひとりを大切にする教育の実現
 市場競争原理を公教育に導入し、「できる」子どもや経済的に豊かな子どもだけを選別して育成するのではなく、一人ひとりの子どもの可能性、個性を大切にした教育を実現し、平和な社会の担い手を育てます。子どもたちが、生き生きとすこやかに、そして個性豊かに学び、遊び、生活できる条件を社会の責任で保障します。すべての子どもが、性差や個性、家庭の所得状況にとらわれず、どこでも等しく教育を受けられるように、教育基本法の理念、子どもの権利条約の原則を具体化します。また、生涯のあらゆる段階で人々が自らの能力と存在感を高めていけるよう、職業および技術教育の機会を公正に保障します。
⑫あらゆる価値観を保障した創造的文化
 生活を豊かにおくるために不可欠な文化や芸術の分野では、表現の自由やあらゆる価値観が保障されるべきです。また階層、性差、障害の有無などによって、文化や芸術を体験し、創出する権利が損なわれてはなりません。メディアの発展は民主主義の根本にかかわる問題であり、権力や支配層の意思、考え方が一方的に押しつけられることがないように、表現および言論の自由を徹底的に擁護します。
⑬民意を反映する政治への改革
 政治の民主主義を拡充する前提は、人々の多元的な価値観が議会政治の場に的確に反映されることにあります。そのためには、民意を切り捨てる小選挙区制度ではなく、比例得票数を議席配分の中心に据えた選挙制度への改革が不可欠です。政策の対立軸を明確にした穏健な多党制の下で、国民に信頼される政治の展開を促します。また、中央集権・官僚主導の政治を分権・市民主導の開かれた行政に転換するとともに、政官業癒着・金権腐敗政治の根絶に向け、企業・団体献金の規制・廃止を実現します。

 この政策の基本課題は、国政選挙や地方選挙の政策やマニフェストの基本になっています。これは、市場経済での公平さや税制の公平性、労働者の利益確保、環境保護地方自治の確立、アジアとの友好、日本国憲法の擁護がベースになっています。しかし、日米安全保障条約の廃棄や政党助成金の拒否、セクシャルマイノリティーの観点などのなさが村山政権時代の悪しき遺産から抜け切れていないのです。これは、日本での社会民主主義政党としての誇りがもてません。
 政策は、支持関係の労働組合や市民団体からの要望で作るのではなく、無党派の住民や労働者からアンケートや聞き取り、ネットでの投稿フォームなどで具体的な政策やマニフェストを作るべきです。